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「私料理得意なんです! ご飯作るの任せてください、私はほらー佐伯さんみたいに責任あるお仕事任されてるわけじゃないから負担にならないし? 営業部エースの成瀬さんの健康管理が出来るなら、それもお仕事になりそうだし、あはは」
そんなことを言う彼女に、駄目だと叫んでしまいそうだった。
偶然から始まったとはいえ、私だけに任された特別な役割。自分の代わりにこの子が合鍵を使って入り、食事を手渡すところを想像するだけで泣きたくなった。これは完全に私情だ、私は嫉妬しているのだ。
私以外に成瀬さんのあの姿を見せてほしくない、という、勝手な独占欲。
許可しないでほしい、断ってほしい。私はそんなの耐えられない。
祈る気持ちで成瀬さんを見上げた。彼は考えるように高橋さんを見ている。私の視線に気づいているのだろうか、それとも私の願いなんてどうでもいいだろうか。
「……いや、気持ちだけ受け取っておくよ」
苦笑いしながら成瀬さんが言った。
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