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「さっき言われてその通りだと思った。俺は人に甘えすぎたから、いい加減自分のことは自分でしないとね。高橋さんの気持ちは嬉しいけど、君は君でこれから仕事を沢山覚える必要があるからね。自分のことを頑張って」
断りのセリフが聞こえてきて、私は安心で泣きそうになった。ああ、よかった、少なくとも高橋さんにこの合鍵を渡すことはなさそうだ。肩の力が抜ける。
彼女は頬を膨らませて拗ねている。成瀬さんは話を切り上げるように言った。
「免許証貰うね、届けてくれてありがとう。もう夜遅いから」
「はーい今日のところは帰りますね。あ、佐伯さんももう帰りますよね? 一緒にタクシー乗っていきませんか? 家どこですか」
「え!? あ、えっと、今日は友達の家に泊まるから……会社の近くなんだけど」
「よかった方角一緒。じゃあタクシー相乗りしましょ。成瀬さん、おやすみなさーい」
高橋さんは私の腕を強く掴んだ。長い爪がやや食い込んで痛みを覚えるほどだ。結局今日、成瀬さんに話したいと思っていたことが叶わない。私は困った視線を送ったが、成瀬さんもどうしようもない。高橋さんがいる限り、私がここで残るのは無理がある。
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