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「佐伯さんの前ではお願いします、って言いにくいでしょー? 成瀬さんの優しさですよ! 私は分かります。明日からはこっそり私が成瀬さんに差し入れを作って届けますね! 料理得意なんですよ。成瀬さんって何が好きなんですか?」
そうなのか、とぼんやり思った。
私がいる手前、高橋さんに許可を出しにくかっただけで、本当はお願いしたいと思ってたのかな。二日連続で二人でご飯に行くぐらいの関係なら、確かに高橋さんにやってほしいと思うのかもしれない。
じゃあこれからはやっぱり、高橋さんが今まで私がやってみたいに? 成瀬さんの駄目なとことか全部この子も知るようになって、ご飯あげたり買い物に行ったりするの?
この鞄の中に入ってる合鍵、成瀬さんに返したら、高橋さんのところに行くんだろうか。
「成瀬さんの、好物は……」
「はい!」
「なんでも、好き、みたいだよ……」
自分で情けなくなるぐらい、小さくくぐもった声で答えた。
カレー、だなんて、教えたくなかった。
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