悲しみも吹っ飛ぶ

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   鞄から鍵を取り出す。まだ慣れない形のものだ。私のものではない、ただ預かっているだけの鍵。それを鍵穴に入れ回した。    友人の結婚式のため、有給をもらい三連休をさらに延長させ、久しぶりに実家に顔を出していた。お喋りなお母さんは元気だったし、寡黙なお父さんも相変わらず優しかった。たっぷり実家を堪能したので、彼に会うのは少し久しぶりになってしまっていた。  大丈夫、かな。私の心は心配でいっぱいだ。 「お邪魔しま」  言いながら扉を開けたとき、玄関にあったのは大きなゴミ袋だった。ぎょっとする。中に見えるのはカロリーメイト、10秒チャージゼリー、時々フリーザーバッグ……。  私は慌てて靴を脱ぎ捨てて中に入っていく。廊下はいつも通り綺麗だ、磨き抜かれている。さらに進みリビングのドアを開いた。閑散とした広いリビングがある。  大型テレビに、一つのソファ。ただそれだけの部屋。殺風景にもほどがあるそこは相変わらずの姿をしている。  黒いソファの上に、ごろりと寝そべる人の髪が見えた。私は駆け寄る。 「成瀬さん! 成瀬さん、生きてますか!?」
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