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薔薇の笑窪
「どんな言葉ならあなたは傷付くの?」
あら、そんな風に見えていたの僕って?あゝごめんね、質問に質問で返してしまったりしてさ。
「あなたに傷付いて欲しいわけじゃないの」
なんてこと。ほらほら泣かないで、涙を拭いてよ。僕だって君に泣いて欲しいわけじゃないんだ。
「そうやっていつもいつも笑わないで」
そんなこと言ったって笑ってる方が楽しいよ。ほら見て、僕の笑窪は君の為にあるんだ!
「兎は何処へ行ったの、猫も小人も女王も」
それに僕は答えられない。悲しいな、君が泣いているのは悲しいな。ねえ顔を上げて、帽子の中から青の花束。涙の色。小さな海。
「私もう、大人になっちゃったの。だからもうここには来られないの、帽子屋さん」
愛してるのよ、愛しているんだけれど。
愛しているから、こそ。
僕は君の髪を少し撫でて、分かったよ。さよならなんだね。だったら薔薇の迷路まで送らせて。この鍵を持っておゆき、いつでも僕を傷付けたくなったら戻ってこられるように。
けれどねアリス、どうか聞いて。
「君の言葉は真っ直ぐ過ぎて、いつだって僕を傷付けてやまなかったよ」
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