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§1 欲求
「ねえ、胸に触っていい?」と耳元で許可を求められ、汐梨は訊かれる事自体が恥ずかしいと思った。
「うん、いいよ!でも、キスはやめないで!服の上からだからね」と注文を付けた。奏多の手の平で大きさを確かめる様に胸を覆われ、形を確かめる様に揉まれ、汐梨は彼の唇をねだった。
「汐梨のおっぱい、柔らかくて大きいね。ずっとプニプニしていたい!」
「また、変態みたいな事を言うのね。もうお終いだよ!」と手を払い除けて立ち上がった。
初めてのキスから2週間後にはディープキスになり、舌を絡めて唾液を交換し合うまでに進んでいた。
「汐梨の唾液は甘い味がする。二人の分泌物が溶け合って、一つになる快感がたまらないな」
「また変な事を言って!わたしは最初気持ち悪かったけどね。でも、奏汰の言う事が分かるような気がする」と奏汰の影響を受けた汐梨も、率直な感想を述べるようになっていた。
しかし、二人の性的な接触がエスカレートしていく中で、奏汰がスカートの中に手を入れようとした時、
「だめ!それはまだ心の準備ができていないし、こんな所で触られるのはいや!」と頑なに汐梨は拒絶した。その真意は、これまでのキスと愛撫で下着がびしょ濡れなのを隠したいのと、近い内にするだろうセックスの時まで大切に取っておきたいという思いがあった。一方で、男性の物がどうなっているのかを予備知識として知りたい思いがあったが、自分からはとても言い出せる状況になかった。奏汰が自分の男性部分に汐梨の手を誘導する事は一度もなく、好奇心が満たされないままでもどかしかった。
汐梨は奏汰との睦み合いに夢中で、勉強も部活も疎かになっている事を自覚していた。暴走する欲求に歯止めを掛けるためには、奏汰と一線を越えるしかないという曲論に達した。しかし、具体的に奏汰と裸で抱き合っている姿が思い浮かばず、経験者である花恋に相談を持ち掛ける事にした。
新年度が始まってから数週間の内に、ラグビー部の蛮行が明らかになり校内の噂になっていた。当然の事ながら、花恋は当事者として、というより暴行といじめの被害者として事情聴取されていた。女子マネの星夕花里がこの事件の元凶だと判明し、退学処分は免れたものの星は居たたまれずに自主退学をしていた。ラグビー部は半年間の活動停止、監督は責任を取って辞任、星と関係を持った部員は謹慎処分になっていた。その中に、五十嵐柊も含まれており、花恋は裏切った彼に対して改めて憎しみを抱いた。ただ、花恋を犯した二人は卒業した事を理由に、また不祥事が警察沙汰になる事を学校側が恐れて不問に付された。
「花恋、大変だったね!心配したよ!星って人もそうだけど、五十嵐先輩にはがっかりだね」
「もう大丈夫だよ!いろいろ訊かれたけど、全部さらけ出せてすっきりしてる。わたしも柊君に夢中で、周りが見えなくなっていた。しばらく恋愛はしないつもり」と花恋は自分の落度もあると反省していた。
「確かに、あんまり夢中になり過ぎると駄目だね!自分が自分を、コントロールできなくなるようで怖い!花恋はもう恋はしないの?花恋を救ってくれた、誰だっけ?好きにはならないの?」
「ああ、氷室のこと?お相撲さんみたいで、タイプじゃないんだよね。それよりも、汐梨は大空とどうなったの?まだ付き合ってるんでしょ!」と問われ、汐梨はこれまでの進展状況を洗いざらい伝えた。
「そうか、汐梨も大人の女になりつつあるか!そこまで行ったら、ロストバージンも間近だね」
「それで悩んでるんだけど、どうすればいいのかな?花恋はどうだったの?」
「どうすればというのは、するかしないかってこと?それとも、セックスのやり方のこと?」
「うん、どっちも。キスとかエッチとか、ついこの間まで私には無関係だと思っていたのに、半年の間にわたしの身体は欲望の虜にされてしまった」と汐梨は理性と欲望との狭間で悩んでいる事を明かした。
「それが恋愛だから、前に進む事を怖がっていたら、一生バージンのままだよ。汐梨は、大空のことが好きなんでしょ!大空は汐梨に気を遣って、強引に求めて来ないんじゃないかな」
「そうかもしれない!わたしが嫌がると直ぐに止めてくれるし、冗談で気を紛らそうとしてくれる。わたし実はまだ、エッチする事が怖いんだ!花恋は初めての時、どうだったの?」
「初めて自分の中に異物を迎え入れるんだから、それは誰だって怖いよ。それよりも好きな人と結ばれる喜びが勝って、痛さも忘れられた。まあ、痛いと言っても、鼻に硬い物を突っ込まれる程度だよ」
「鼻に突っ込まれた事がないから分からないけど、いつかは通らなければならない試練だね」
花恋は五十嵐と結ばれた時の事を思い起こしていたが、強姦された時の事がよみがえり、それ以上は口を閉ざした。汐梨も花恋の顔色の変化に気付き、話題を変えた。
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