§1 あこがれ

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§1 あこがれ

 修学旅行で堀と一緒の班になった汐梨はうれしくて、その思いを花恋に話した。 「やったね!良かったじゃん!あこがれの君と一緒なんて、思い切って告白してみれば?」 「何それ!できる訳がないよ!一緒の班だってことだけで、話なんてできないし」と真っ赤な顔をしている汐梨が、花恋はおかしかった。花恋は汐梨とは真逆な性格で、好きな男子には積極的に行動するタイプだった。だが、小学生の男子はまだ幼稚で、花恋の思いが受け入れられる事はなかった。  旅行中の班別研修ではぐれてしまった汐梨を堀が見つけ、 「雨宮、大丈夫だったか?どこかで泣いてるかと思って心配したぞ!」 「あ、ありがと!」と返すのが精いっぱいで、手をつないでくれた事が忘れられなかった。それを花恋に話すと、「手をつないだの?それで、好きだと言ったの?」とからかわれた。  汐梨の堀へのあこがれは、小学校卒業とともに終わった。堀が私立の中学校へ入学したためで、公立に進んだ汐梨にはさらに遠い存在になってしまった。  中学生になった汐梨は、花恋と一緒にテニス部に入り、彼女の影響もあって小学生までの性格が一変した。男子とも普通に話せるようになり、行動も活発になっていった。中2になった汐梨の胸の膨らみは同年代の女子たちよりも目立ち、男子から見られたり、話し掛けられたりするようになって自信が着いていった。 「シオリンのおっぱい、大きいよね!スポーツブラじゃ、もったいないよね!普通にCカップはあるか」 「いやだ、花恋たら!そんなにないよ!でも、走ったりする時に邪魔かな!」 「いいな!あたしなんか、Aカップだよ。男子に触っていいよって、言う自信ないよ」 「えー?それって、触られたことがあるの?」 「ちがうわよ!例えばよ。そういうシオリンは、好きな男子はできたの?」  花恋の性格はオープンで、好きな男子ができると告白したとかデートしたとか、汐梨に逐一報告を欠かさなかった。汐梨が知っているだけでも、中学生の間に3人に告白し、ファーストキスも済ませていた。一方の汐梨はその点では奥手で、小学校の初恋以来好きだと思うような男子はできなかった。
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