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でも、こんな話は弟にはしない。たった一時間だもの。楽しい話をしたいし、弟の話を聞きたい。
「ねえ、そっちから、帰ってこれんの?」
「帰り方が分からん」
「魔王にぶったたかれたら帰れるんやないの」
「・・・トラックぶつかったときな、ものすごく痛かったんよ。死ぬかと思った・・・ていうか、たぶん一回死んだんやろうな。また死ぬ勇気がない」
「ごめんな・・・イヤなこと思い出させて」
「いいよ、それに俺、勇者だから。勇者には責任があるんだよ。魔王は倒さんといかん」
「勝てそうなん?」
「うん。猫耳人獣女子のシルベーヌが仲間になったから、パワーでは負けんようになったよ」
「シルベーヌちゃん、かわいい?」
「けなげ」
ほんと、お前のパーティ、女ばっかりやな。あきれるよ。
私のそんな気持ちを察したのか、弟はすねた声を出した。
「別に、女ばっかり選んでるわけじゃねーから。集まってくるだけやし」
「何も言ってないじゃん」
「姉ちゃんの考えることくらい分かるし」
何となく、二人で笑った。そして、ちょっとの間沈黙した。
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