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言っている意味が分からなかった。掌がまだ痺れている。体の震えが止まらない。涙が頬を伝う。僕はその場に嘔吐した。由香里が怒鳴ったが何と言ったのか聞こえなかった。僕はゆっくりと立ち上がり、用意しておいたシャベルを片手に亜里沙を担いで捨てに行った。だが、思うように前に進めない。視界もどんどん悪くなっていく。僕は3分ほど歩いたところで雪を掘り、亜里沙を捨てた。へとへとで戻ってきた僕に掃除中の由香里が、
「ない」
「何が?」
「指輪」
「指輪?」
「取れてる。してきたのに。探してもない」
早口で今にも泣きだしそうな口調だった。僕には言っている意味がわからなかった。だが、由香里は「ない、ない、どうしよう」と取り乱している。
「落ち着けよ、どういうことだよ」
「わかんないの? あいつの服とかに紛れ込んだかもしれないんだよ。もしかしたら、握ってるのかもしれない。それが見つかったらどうなるかわかってんの?」
そう言われてようやく理解できた。確かにかなりマズい状況だ。
「取りに行くか?」
「なんとかして。私は掃除しとくから」
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