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僕はもう一度外へ出た。だが、亜里沙を捨てた場所がどこかわからなくなってしまった。たいした距離ではないのに探しても探しても見つからなかった。いくら吹雪いているからといって、すっかり体を隠してしまったとは考えにくい。僕は必死に探し回った。だが、全身が思うように動かなくなってきたので戻った。
「あった?」由香里が訊いてきた。
「見失った。ごめん」
「どういうこと?」
「ごめん、どこに捨てたかわからなくなって」
「何それ」
「ごめん」
「どうするの?」
「何が?」
「見つかったら」
小さく開いた口が固まる。言葉が出てこない。全身が真っ白に染まっていくような寒気を覚えた。テレビに目をやる。聞こえてくる音を頭が理解していなかった。
「ドア、閉めてよ。寒い」
「ごめん」
「どの辺に捨ててきたの?」
「何が?」
「死体」
「わかんないけど、そんなに遠くないところ」
由香里が大きなため息をつき、立ち上がり、
「私も探してくる」
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