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由香里
由香里は点けっぱなしになっていたテレビを消した。芯まで冷えていた体が痺れとともに温まっていく。ボロボロのソファに座る。
テーブルの上には達也がさっきまで飲んでいただろうコーヒーと文庫本が3冊重ねて置かれていた。達也は本を読まないので、彼の父のものだ。一冊手に取り、数ページ捲ってやめた。
先ほど殺した亜里沙のことを思い出す。名前の割には地味な女だった。一度も髪を染めたことがなく、服装にもこだわっておらず、異性との交際経験も少なさそうな女だった。
亜里沙とは高校の同級生で嫌いだった。なにがどうというわけではない。本能が受け入れることを全力で拒否していた。そんな彼女が結婚したと知ったのは、たまに利用しているSNSサイトだった。
満面の笑みを浮かべ指輪を見せる亜里沙の隣には達也がいた。
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