Episode2・魔界の玉座のかたわらに~家族で初めての洞窟探検~

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「ごちそうさまでした!」 「イスラ、お腹いっぱいになりましたか?」 「うん!」  大きく頷きましたが、ぐ~っ、イスラのお腹の音です。  イスラははっとしてお腹を押さえて焦ったように首を横に振りました。 「ち、ちがうんだ! もうほしくない! しずかにしなきゃだめだぞ?」  お腹にまで話しかけて誤魔化すイスラに苦笑しました。  心配をかけまいとする気持ちだけで充分です。 「持ってきた食材だけでは足りなかったようですね。今日はたくさん体力を使いましたから」  よく考えれば当然です。  イスラは育ち盛りの子どもで、鍾乳洞では神経も体力も使うのです。普段よりお腹が空くのは当然のことでした。 「すみません。もっと持ってこれば良かったです……」  少しでも荷物を軽量化しようと必要最低限の物しか持ってきませんでした。もしもの時は脱出できるという油断もあったのです。これは私の落ち度です。 「だいじょうぶ。もうほしくない」 「ありがとうございます。ここを出たらたくさん食べましょうね」  いい子いい子と頭を撫でるとイスラが照れ臭そうに抱きついてきました。  両腕でそれぞれイスラとゼロスを抱っこしていると、イスラが大きな欠伸をします。ゼロスもむにゃむにゃと目を擦りだす。二人とも眠くなったのですね。 「明日も早いですから、そろそろ寝ましょう。こっちですよ」  ハウストが作ってくれた天幕でイスラとゼロスを先に寝かせます。 「おやすみなさい」二人の額にそっと口付けると、間もなくしてすやすやと眠っていきました。とても疲れていたのでしょうね。  天幕を出ると、焚火の前にいたハウストの隣に腰を下ろしました。  ハウストはドミニクから受け取った鍾乳洞の地図を広げています。 「二人は眠ったのか?」 「はい、あっという間でしたよ。今ってどの辺りなんです?」  一緒に地図を覗き込む。  古い地図ですが入口からここまでの道順はほぼ正確です。という事は、祈り石もこの地図に記された場所にある可能性が高いです。 「ここだ。明日も今日と同じくらい歩くことになるぞ」 「いよいよ、ですね」  どうしましょう。楽しみです。  明日の今頃は祈り石の原石を手に入れていると思うと、ちょっと興奮までしてきましたよ。 「気合い入ってるな。そんなに祈り石が欲しいのか?」 「えっと、それは……」  あなたの指輪が作りたいなんてまだ言えません。  誤魔化すように視線を泳がせて、「そうだ!」と強引に話しを変えます。 「お茶飲みませんか? 渋味と苦味が強いのでイスラとゼロスはまだ飲めませんが、味わい深い薬草のお茶があるんです」 「誤魔化しただろう」 「なんのことでしょう」  白々しいと分かっていても、ごめんなさい、最後まで誤魔化させてくださいね。  そしてハウストも分かっていて許してくれる。  彼は苦笑するとお茶を淹れられるように焚き火の火力を強めてくれました。 「どうぞ、飲んでみてください」 「ありがとう」  二人分のカップに二人分のお茶。  城で飲むような上質な紅茶ではありませんが、不思議ですね、こういう場所で月を見上げながら飲むお茶は格別です。
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