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シャルロッテはひとまず練習中だったカーテシーで挨拶をする。
金髪の男性はそれを見ると、すかさず品よく胸の前に手を当てて足を交差して引き、一礼する。
「クリストフ、お願いだからシャルロッテを怖がらせるなよ?」
「まるで俺が悪いやつみたいな言いぐさじゃないか!」
「実際そうだろう」
「ひどいっ! エルがそんな事を言うなんて、幼馴染として悲しいぞ」
エルヴィンは大げさなリアクションを取るクリストフを放置し、シャルロッテに「おいで」と言って部屋に招き入れる。
シャルロッテは邪魔じゃないだろうか、と心配しながらゆっくり二人のもとに近づく。
「こいつはクリストフ。これでもこの国の第一王子だ」
「王子様っ?!」
シャルロッテは驚いて思わずもう一度カーテシーで挨拶をしてしまう。
「その言い方はひどいぞ、エル。従兄弟の仲じゃないか」
「従兄弟さま、ということはエルヴィン様も王族の方なのですか?」
「いや、私の父親が王の弟だったから公爵の位にいさせてもらっているだけだよ」
(なるほど。ではお二人ともやはりすごいお方)
「お前が溺愛していると聞いたからどんなご令嬢かなと思ったが、やはり可愛らしいお方だな」
そういってクリストフはシャルロッテに近づくと、彼女の手の甲に唇をつける。
「え?」
「なっ!」
クリストフはすくっと立ち上がると、一礼をしてシャルロッテに挨拶をした。
「シャルロッテ嬢、ぜひこのクリストフとも仲良くしていただきたい」
「え、ええ。もちろん。よろしくお願いいたします」
慌ててお辞儀で返すシャルロッテは、ただのお辞儀かカーテシーかわからない中途半端な礼をしてしまう。
その様子を見てクリストフは優しく微笑むと、エルヴィンに話しかける。
「なるほど、これは溺愛する意味もわかるな」
「……」
エルヴィンの顔はひくひくと引きつってクリストフに怒りの視線を向ける。
「お前がそこまで感情を露わにするのを初めてみるよ」
「感情的になどなっていない」
「その否定がすでに感情的だ」
「それじゃあ、また来るよ」と言ってクリストフは二人に挨拶をしたあと部屋から出た。
部屋にはシャルロッテとエルヴィンが残される。
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