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「それではゆっくりお休みくださいませ」
そういってレオンはエルヴィンの部屋のドアをゆっくりと閉めて退室した。
「シャルロッテ、ごめんね寂しい思いをさせて」
「いいえ、無事でしたらそれでよいのです。でも、ちょっと寂しかったです」
「ちょっと」と言って少し遠慮がちに寂しさを伝えたシャルロッテの嘘に、エルヴィンはすぐ気づいた。
エルヴィンはシャルロッテに近づくと、そっと背中に腕を回す。
それを受け入れるようにシャルロッテもエルヴィンの腰に腕を回して、愛情を伝えた。
すると、エルヴィンはシャルロッテの腕を強く引っ張るとそのままベッドへと押し倒す。
「エルヴィン様っ?!」
「会いたかった……ずっとシャルロッテの声が聴きたくて」
ベッドへと仰向けになるシャルロッテの右手を、エルヴィンの左手がおさえる。
右手でシャルロッテの流れるような髪を梳くとそのまま頬へとすべらせた。
細く長い指先がシャルロッテの唇をなぞる。
「可愛いシャルロッテ、私は寂しかったよ」
「私もです。ずっとエルヴィン様の声が聴きたくて毎日眠れませんでした」
「そう、眠れないのはよくないね」
「心臓も苦しくて辛く、エルヴィン様のことを思うとなんだか呼吸が乱れて苦しいのです。病気になってしまったのかもしれません」
「え……?」
シャルロッテは素直に自分の症状を伝えると、エルヴィンは驚いた表情をしたのち、ふと笑顔を見せた。
「どうかなさいましたか?」
「いや、シャルロッテ。私は嬉しいんだ、今。なぜだかわかるかい?」
「……ごめんなさい、わかりません」
申し訳なさそうにしゅんとした表情を見せるシャルロッテに、エルヴィンはもう一度頬をなでて優しく言葉を紡ぐ。
「いいかい? シャルロッテのそれはね病気じゃなくて『恋』というものだよ」
「恋?」
「ああ、シャルロッテは私に恋をしているんだ」
「──っ! 私がエルヴィン様に……」
シャルロッテには思い当たる節がいくつもあった。
エルヴィンといるといつも心地よく、傍にいないと落ち着かない。
そして、抱きしめられると鼓動が速くなって苦しくなる。
(これが……恋……)
「シャルロッテ、私も君のことが好きだよ」
「嬉しいです、本当に。ありがとうございます」
そうしてエルヴィンはシャルロッテの首元に顔をうずめる。
「シャルロッテ、愛してる」
しかし、その言葉の返答が返ってくることはなく代わりに静かな寝息が聞こえてきた。
「シャルロッテ?」
エルヴィンがよく見ると、シャルロッテは安心したように穏やかな表情で眠りについていた。
「これはなんというか、警戒されていないというか、私の理性を試しているのか」
そういって眠るシャルロッテのおでこに優しく唇をつけると、ゆっくりとエルヴィンもその横で眠った──
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