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「さて、ヴェーデル伯爵、あなたは領内の税金を8年前から不正に操作して国に報告していましたね?」
「いえ、そのようなことはございません」
「さらにいえば、先日その額を増やして領内から納められた税金の多くを懐に入れましたね?」
「全く事実ではありません」
「しらを切っても無駄ですよ」
目を泳がせながらもあくまで不正を否定するヴェーデル伯爵は、額から汗がにじみ出る。
その様子を見ながら、エルヴィンは手に持っていた帳簿を掲げる。
「ここに領内からの納められた正式な金額が記された帳簿があります。これを見てもまだ言い逃れしますか?」
「なっ!?」
ヴェーデル伯爵は慌てて自分の持っている書類や帳簿を見る。
そこにはあるはずの不正の証拠である本物の帳簿がなかった。
「探してもありませんよ、だって私の手元にありますから」
「くっ!」
「なぜ、とでも聞きたい顔をされていますね。そういえば側近のルーカスさんはどこにいますか?」
「ルーカスだと?! まさかっ?!」
そういうと、クリストフがドアの外から手を縛られたルーカスを連れてくる。
「ルーカス!」
「だましやがったな、この冷血公爵!! 自白すれば俺だけは逃がすって言ったじゃねえか!!」
「ふ、許すわけないでしょう? 私は『冷血公爵』ですよ?」
「ルーカス!! 裏切りおったのかああ?!!!!」
ヴェーデル伯爵がルーカスへの恨みを爆発させて叫び、ルーカスは冷血公爵ことエルヴィンに恨みを吐き捨てる。
「さ、これで不正は言い逃れできませんね。では次に移りましょう」
そういうと、クリストフの側近に連れられてヴェーデル伯爵の妻アメリ―と娘エミーリアが部屋に入ってくる。
「アメリ―……エミーリア……」
ヴェーデル伯爵の横に並ぶよう指示された二人は黙って俯きながら向かう。
「アクス公爵夫人より訴えがございました。アクス公爵とヴェーデル伯爵夫人が不倫関係にあると。ヴェーデル伯爵夫人、何か申し開きはありますか?」
「いえ……ありません」
「お前っ!!」
目を虚ろにし、全てをあきらめたかのような表情を見せるアメリ―はその場で顔を手で覆い、泣きながらへたり込む。
「よく認めましたね。不貞行為についてもヴェーデル伯爵はご存じで証拠も見ているそうですね。そうですよね、ヴェーデル伯爵?」
「私は知らない」
「あなたっ!!」
「私はこいつの不貞行為など知らんっ!!」
妻のアメリ―を裏切って自分は知らぬと言い張るヴェーデル伯爵に、エルヴィンは目をピクリとさせる。
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