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「ヴェーデル伯爵、伯爵夫人。はじめまして、シャルロッテと申します」
シャルロッテは、昔に家庭教師から教わったカーテシーをするが、うろ覚えの彼女はうまくできない。
「まあ、この子まともな挨拶もできやしないのね」
ふん、というように夫人が蔑んだ目でシャルロッテを見る。
そして、時間が惜しいとでもいうように「要件だけ伝える」とヴェーデル伯爵はシャルロッテに告げる。
「エルヴィン・アイヒベルク公爵からお前に婚約の話が来ておる。行ってくれるな?」
「それはもちろんですが、私が公爵様に嫁ぐなど……そのような大変ありがたいお話よろしいのでしょうか?」
「ああ、なんたって今日はお前の18歳の誕生日だからな。親としてできる限りの最後のプレゼントをしないと」
ヴェーデル伯爵は「最後の」という部分を強調して言った。
「で、もう馬車の準備はしてある。まあ、ありがたいことに公爵様は何も持参せず身一つでいいと言ってくださっている。だからそのまま出ていいぞ」
「……かしこまりました」
「じゃあね~、お・ね・え・ちゃ・ん♪」
エミーリアは手をひらひらとさせながら、楽しそうにシャルロッテに向かって手をふる。
「ではもう出ていけ」と言うヴェーデル伯爵の言葉を聞き、シャルロッテはメイドに連れられて玄関へと向かった。
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