第2話 初めまして公爵様

3/4
前へ
/47ページ
次へ
 シャルロッテのいなくなった執務室では、家族がけたけたと笑っていた。 「やりましたわね! お父様、お母様!!」 「ああ、ようやくあの忌々しいやつをこの家から追い出せたぞ」 「それにしても嫁ぎ先のお方のことを何も教えないなんて、ずいぶん可哀そうなことをするわね~」 「エミーリアも思ったわ! だって、嫁ぎ先ってあの『冷血公爵』なんでしょ?! 何されるかわかんなくて、エミーリアこわ~い」  エミーリアが母親の腕に掴まって、わざとらしく大げさなリアクションをする。 「まあ、これでうちは安泰だ! アハハハ!!!」  廊下に聞こえるほど家族の大きな笑い声が響き渡っていた──  シャルロッテはメイドに促され、玄関につけていた馬車に乗り込む。  彼女が乗ったことを確認すると、メイドは乱暴に閉めて御者に合図をした。 「うわっ!」  馬車が動き出したと同時にシャルロッテは態勢を崩し、窓に頭をぶつける。  ぶつけた箇所をさすりながら、ようやく席に着いた。 「これが馬車というものなのね、気をつけないと危ないわ」  こうして、馬車はまっすぐにアイヒベルク公爵家へとむかった。
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

772人が本棚に入れています
本棚に追加