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シャルロッテのいなくなった執務室では、家族がけたけたと笑っていた。
「やりましたわね! お父様、お母様!!」
「ああ、ようやくあの忌々しいやつをこの家から追い出せたぞ」
「それにしても嫁ぎ先のお方のことを何も教えないなんて、ずいぶん可哀そうなことをするわね~」
「エミーリアも思ったわ! だって、嫁ぎ先ってあの『冷血公爵』なんでしょ?! 何されるかわかんなくて、エミーリアこわ~い」
エミーリアが母親の腕に掴まって、わざとらしく大げさなリアクションをする。
「まあ、これでうちは安泰だ! アハハハ!!!」
廊下に聞こえるほど家族の大きな笑い声が響き渡っていた──
シャルロッテはメイドに促され、玄関につけていた馬車に乗り込む。
彼女が乗ったことを確認すると、メイドは乱暴に閉めて御者に合図をした。
「うわっ!」
馬車が動き出したと同時にシャルロッテは態勢を崩し、窓に頭をぶつける。
ぶつけた箇所をさすりながら、ようやく席に着いた。
「これが馬車というものなのね、気をつけないと危ないわ」
こうして、馬車はまっすぐにアイヒベルク公爵家へとむかった。
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