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「まぁ……俺も賛成ではないけど。美春(みはる)の親友のお願いだし、今回は志保(しほ)ちゃんに免じて、母さんも許してあげてよ」
黙って食事をとっていた夫の公太郎がそう言ってやっと口を開くと、膨れっ面だった義母の表情はみるみるうちに緩んで。
「んもぅっ、公ちゃんったら。あなたは本当に優しすぎるのよ」
昨年の暮れに31歳を迎えた夫を未だ公ちゃんと呼びながら頭を撫でている義母の姿に、背筋が凍りつくようにぞっとした。
「まぁまぁ、いいじゃん。三ヶ月だけの短期で、週に三日だけって話だし。三ヶ月後には今まで通りに戻るんだから。なっ?美春」
ニコリと微笑んできた夫に、私は無理矢理笑顔を作って頷く。
だけど内心では、たった三ヶ月でこの息苦しい日常だけの生活に戻ることを考えると、まだ始まってもいないのに定められた期間がただただ悲しかった。
「お義母さん、本当にすみません。家事は今まで通り私が全てやりますので」
「そりゃあ当然でしょう?自分勝手に外に出て働くのに、老体の私に家事のサポートを頼むなんて普通の神経じゃできないものね?」
「すみません…もちろんです」
誠意を見せるように謝り、最後には精一杯の笑顔を作る。
だけど私は今、うまく笑えているのだろうか。
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