窮屈な居場所

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顔の筋肉が引きつっているようで、うまく笑えている自信はない。 でも、この自信のない笑顔で。 私はずっと、我慢に我慢を重ねるようにこの結婚生活を乗り切ってきた。 「あ、そうだ美春、仕事は18時が定時だっけ?」 「あっ、うん…」 「じゃあ、遅くても19時までには帰れるよね。19時」 遠回しに夫が告げてくる門限の時間に、私は思わず手をぎゅっと握りしめながら答える。 …我慢。 「うん、そうだね。19時までには帰れると思う」 本当は今日、志保と久しぶりに夕飯を食べに行こうかって話になっていたけど…初日から機嫌を損ねるわけにはいかないから。 だから…私はまた、口角をキュッと上げて夫に笑顔を作って見せた。
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