窮屈な居場所

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彼女、上野志保とは短大時代からの付き合いで、友達歴は9年になる。 志保は、私が唯一親友と呼べるような友人で、彼女にだけはいつだって自分の想いを何でも話せたし、いつだって素の自分らしくいられた。 「とりあえず、美春の話の続きは今日の初仕事終わったらいっぱい聞かせてもらうからさ」 「うぅ…それなんだけどさぁ。今日…ダメになっちゃって。また改めてでもいい?19時までには家に帰らなきゃいけなくて」 「もしかして、門限とか?んなわけな…」 「そっ。そのもしかして。さすが志保だな…」 「ウソでしょ?高校生じゃあるまいし、門限19時って…」 志保の驚いた表情とその言葉に、思わず私もため息がこぼれた。 「って…ごめんごめん。美春の家はちょっと特殊だもんね、また美春の都合いい時でいいよ!私はいつでも合わせるし」 志保はそう言うと、私の肩にそっと手を回しトントンっと優しく肩を抱いてくれた。 久しぶりにごはん行けるね、って。 志保だって楽しみにしてくれてたのに。 ごはんに行くくらい、どうにかうまく出来なかった自分が情けなくて嫌になってくる。 「じゃあ、気を取り直して仕事、頑張ろっか」 「…うん」 「ほらほら、そんな顔しないのー!初日からそんな顔してると絡みづらい奴って思われちゃうぞ!」 「…ふふっ、そうだね。よしっ!」 志保の言葉で気を取り直した私は、先に歩き出していく志保の後を追い、隣に並ぶと同じ歩幅で大手町のオフィス街を歩きだした。
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