窮屈な居場所

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「でもさ、志保。本当に私なんかで大丈夫なのかな?」 気を取り直したとはいえ、立ち並ぶ高層ビルを見上げていると、今回の話は本当に私なんかでいいのだろうかとなんだか不安になってしまった。 「大丈夫だって。期間も短期だし、営業部のサポートっていっても事務作業みたいなもんだしね。ワードとエクセルさえ出来たら何とかなるから」 「本当に?私、就職だって一度もしたことな…」 「大丈夫!送ってもらった履歴書も何も問題なかったから採用になったわけだし。つまらない心配しないの!」 志保はそう言って、あははって笑ったけれど。 私としては不安が消えないわけじゃなかった。 そもそも今回の話は、志保からきたメッセージが始まりで。 志保の働く大手不動産会社の営業部で、1月15日から4月15日までの三ヶ月、週3日程度の短期でも構わないので、働けるような人が周りや知り合いにいないか?というような内容だった。 本来ならば志保の高校時代の後輩にお願いする話でまとまっていたらしいけれど、その後輩が直前になってドタキャンしてきたらしく、相当困っている、と。 だから私は声をかけられる友人にはかけるだけかけてみたけれど… 正社員で仕事をしている子や、妊娠中の子、子育て真っ最中の子…と、私の周りの友人たちは短期でも働けるような状況の子が1人もいなかった。 それを志保に伝えると、志保は何を思ったのか… 「じゃあ美春は?」と、突然私に聞いてきた。 私の家庭の状況では働けるわけないじゃん…と、言われてすぐに断ったけれど。 「ダメだって言われたら私からも公太郎さんにお願いするから。今から求人募集かけても間に合わないし…。三ヶ月だけ!ね?お願い!私を助けると思ってとりあえず履歴書だけ送って⁉︎」 と…どういうわけかグイグイ押しに押されてしまい、私は志保に言われるまま履歴書を志保の会社に送付した。
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