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第十五話『決行日』
「あれな? おはよう! あのさ、今日の放課後に元コン野郎をとっちめようと思うんだけど」
『嶺歌ちょっとお待ち下さいな、モトコンヤロウとは何ですの?』
「元婚約者の略!」
『まあ! 何て斬新なニックネームなのでしょう! 私もそちらを使わせて頂きますの!!』
決行日の朝方、形南に電話をかけた。彼女とはこの約二週間敢えて連絡を控えていた。
理由は復讐に高円寺院家が関わっていると疑われないためだ。あくまで嶺歌が行う独りよがりの復讐。これはそう見せなくてはならない。
それを察していたのか形南の方からも連絡がくることはなかった。
だがせっかくの復讐だ。形南には目の前では難しくとも是非観客として彼の反省した姿を目にしてもらいたい。嶺歌はそのまま言葉を続けた。
「うん使って。それと復讐の現場をね、あれなにも見て欲しいんだよね。勿論隠れて見られる安全な場所で」
嶺歌は早速形南に復讐の内容を説明してみせた。静かに聞いていた形南は嶺歌が計画を話し終えるとまあまあと驚きを交えた言葉を溢し、嬉しそうに言葉を返してきた。
『是非そうさせていただきますの!』
「良かった。じゃあ放課後はそこにいてね」
『ええ分かりましたの』
彼女がすぐに答えてくれた事で用件は終わりそのままじゃあ後でと電話を切ろうとした時だった。
『嶺歌』
形南が不意にこちらの名を呼んだ。
『本当に、有難う御座います』
丁寧な言葉だった。いつも上品な言葉遣いの形南であるが、今の感謝の言葉は彼女の奥底に眠る言葉に表せない恩情を感じた。
嶺歌はそのまますぐに声を返す。
「必ず謝罪させてやるからね」
その言葉にくすくすと嬉しそうに笑う形南の声を聞き、嶺歌は安堵する。彼女にも笑える余裕があるという事が何よりも救いだ。
一刻も早く目的を果たし、形南にすっきりとした思いで平尾との仲を進めてほしい。
そのまま形南と電話を終えると嶺歌は自身で計画した復讐内容を何度も頭の中でシュミレートし、放課後までに気持ちを固めていた。
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