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「お前どこの人間か知らねえが俺様に喧嘩売ってどうなるか分かってんのか」
とても先程の人物とは思えないこの男は本当に財閥のお坊ちゃんであるのかと疑わしい程に荒々しい口調で嶺歌を脅してくる。
この態度こそ腹立たしいものだがそれでも復讐の場である今は好都合な事だった。
「自分が何したのか分かってないの? 何であたしが謝罪を求めてるのか理解できる?」
「ああ"っ?」
嶺歌の発言に凄んだ様子でこちらを睨みつけてくる。竜脳寺は先程よりも眉間に皺を寄せると形容し難い顔つきで敵意を剥き出しにし言葉を放った。
「意味がわからねえな! この俺様が形南に謝る理由なんてあるわけねえだろが!!!」
本当にこんな人間がいるのかと吐き気がする。嶺歌は謝罪を拒絶した目の前の竜脳寺を幻滅した目つきで見やると彼にとあるものを見せつけた。
「じゃあこれ読んで」
「あ"ん!?」
一つの束になったその新聞紙は、金神流王学園内では有名な学校新聞だ。
それは週に一回、学園の新聞部員が時間を犠牲に様々な情報を新聞紙にまとめて毎週月曜日に全校生徒へ配布される。教室内で配られる為もらえない生徒はいない。そういう代物だ。
だが時々、毎週一回ではなく号外という形で唐突に新聞が作り上げられる事もある。
例えば学園内の生徒がテレビで活躍する大物人物にスカウトされた場合や、世界で一番有名な大学に入学が決まった場合、国の名誉だと誰もが認める賞を獲得した場合など、本当に希少な出来事のみを扱った号外新聞も稀に発行されていた。
「これ、誰のことだと思う?」
嶺歌が新聞紙を竜脳寺に投げつけると、彼は反射的にその束を手に取る。
突然投げたことにドスの効いた声を上げながらもそれを手にした竜脳寺は新聞に視線を当てるとその場で「は?」という声を漏らした。
第十五話『決行日』終
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