第十六話『露見』

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第十六話『露見』

 竜脳寺(りゅうのうじ)の表情は一気に血の気を失くし、そのまま新聞に目を凝らす。  その様子を静観していた嶺歌(れか)は彼がようやく顔を上げたところで解説をしてやる事にした。 「それ、号外の新聞。あんたの特集を新聞部の部長に頼んだら引き受けてくれたよ」  嶺歌が竜脳寺に手渡したのは『竜脳寺の意外な一面』と書かれた竜脳寺に焦点を当てた号外新聞だ。  新聞の制作には約一週間かかる。嶺歌は竜脳寺の観察を一週間ほど行い、それで得た情報を新聞部に持ち込み、交渉していた。  はじめは他校の生徒であり、身元の不明な嶺歌の事を怪しんでいた新聞部であったが、嶺歌が一週間で集めた竜脳寺の行いが決定的に分かる証拠を目にするとこちらに絶大な信用を寄せてくれたのだ。  だがいくら新聞部とはいえ、人の失態を取り上げるような記事作成はそう簡単に引き受けてはくれないだろう。それに記事の的となるのはあの竜脳寺だ。  彼はこの学園内での信頼も厚く、そして彼のこれまでの行いは誰が見ても優秀だった。猫被りぷりも大したものでこれまで誰にも露見する事がなかった程だ。 『興味深い情報だけど、これを学園に広めるのは良心が痛むな。君はこれをどうして流したいと思うんだい?』
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