28人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんだァこれ……どういう事だ?」
竜脳寺は自身の記事がこのような形で取り上げられている事に未だ動揺している様子だった。
先程までの威勢はなくなり、青白い顔色で記事に目を通している。
「だからあんたがやった事実をそのまま記事にしてもらっただけ」
「今更否定なんてしないよね?」
嶺歌は淡々と彼を見据えそう言葉を放つ。
竜脳寺は立ちすくんだまま反応を示さない。いや、動揺していて記事を読むのに手一杯なのだろう。構わず言葉を続けた。
「自分が犯した罪なのに何青ざめてんだか」
その言葉が癪に触ったのか竜脳寺は先程の威勢を取り戻すと「てめえ…」という言葉と共に物凄い目つきでこちらを睨みつけてきた。
鋭い視線は、嶺歌に的を絞るが、こちらもそれだけで気圧されるほど弱くはない。
嶺歌は敵意を剥き出しにした竜脳寺をそのまま睨み返すと再び口を開いた。
「あれなに謝罪する気になった?」
「するわけねえだろが、俺様がなんであの女にしなきゃならねえんだ」
「うわ、最低。罪悪感すらホントにないんだ」
「あるわけねえだろ。あの女が俺に不釣り合いだっただけだ!」
「じゃあ野薔薇内蘭乃はあんたに釣り合ってると思って乗り換えたわけ?」
嶺歌のその問いかけに竜脳寺は心底おかしそうに子気味の悪い笑みを溢すと「んなわけねえだろ」とドスの効いた声を上げる。
「あいつは利用価値が高いから使ってやってるだけだ。俺様に相応しいのは、あんな女どもじゃねえ」
(胸糞)
竜脳寺は調子を取り戻したのかペラペラと言葉を放ってくる。だが彼の発言が増えれば増えるほど、嶺歌の怒りは湧き上がっていた。
今すぐにでも彼を殴り飛ばしてしまいたいが、それをするのは嶺歌の役目ではない。自分はあくまで友人を苔にしたこの男を罰する舞台を用意する存在だ。
ゆえに嶺歌が竜脳寺に加えるのは暴力ではなく、精神的な攻撃であった。
最初のコメントを投稿しよう!