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「俺に喧嘩売っといて逃げられると思うなよ」
すると竜脳寺は調子を完全に取り戻したのか最初に会った時のような鼻につく態度をこちらに向けてくる。
しかし嶺歌はそんな余裕そうな竜脳寺に追撃で攻撃を仕掛ける。
「そろそろ耳でも澄ませたら?」
「あ?」
嶺歌は自身の耳に右手を当て、耳を澄ませるポーズをとった。
その不可思議な嶺歌の行動を見て竜脳寺は再び眉間に皺を寄せる。そしてそれに合わせるようなタイミングでそれは始まる。
『金神流王学園の高校二年生、竜脳寺外理さんは、高円寺院家財閥の高円寺院形南様を去年の5月12日に裏切りました。彼は別の女性と関係を持ち、一線を越えてしまったのです』
「………あ?」
それは校内放送だった。裏庭でも良く響き渡るその大きな放送は、竜脳寺の失態を報道している。内容はほとんど新聞の記事に書かれている事と同じだ。
竜脳寺が形南を裏切ったという事実を視覚だけでなく聴覚からも知らしめる事で本人に自覚させる為であった。とはいえ、これで竜脳寺が反省するとはとても思えない。そもそも奴が心から反省するなど想像もつかないのだ。
「おい! なんだこの放送は! 止めやがれっ!!!」
そう、竜脳寺は絶賛逆ギレ中だ。これでは反省どころか嶺歌への矛先が深まっていくだけだ。しかしこれではまだ足りない。
校内放送は途切れることなく竜脳寺の失態を延々と報道していた。
大音量でそれを聴いているしかない竜脳寺は何かを思い付いたのか放送部へ行こうと中庭グラウンドからの離脱を決めたようだ。しかしそんな事を許すほど嶺歌は優しくない。
「待ちなって」
嶺歌をその場に残しグラウンドを後にしようとする竜脳寺に嶺歌は声を掛ける。奴は非常に憤った様子でこちらを見返した。
「てめえへの仕返しはこの後にしてやる。首を洗って待ってろ」
まるでチンピラのような奴の言動には心底呆れる。
「いや放送部行っても変わんないから」
「あ"??」
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