第十六話『露見』

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 振り返る竜脳寺(りゅうのうじ)嶺歌(れか)はそう言葉を投げる。そうして次の仕掛けに入った。 『〜〜〜♪』  途端に放送は歌へと変わり、この場に不釣り合いな音楽が流れ始める。  竜脳寺は突然の放送の切り替わりに動揺した様子で放送が流れるスピーカーに目をやった。 『竜脳寺外理の失態は〜♪』 『婚約者を裏切ったこと〜♪』 『学園の恥〜♪』 『学園の恥〜♪』 『竜脳寺家の恥〜♪』 『愚かな竜脳寺外理なんてあわれ〜〜〜♪』  流れる音楽は大音量で竜脳寺の元へ流れる。耳を塞いでも聞こえるこの不可思議な音楽に、竜脳寺は分かりやすくも憤りをあらわにした。 「んだこのふざけた音楽は!!! おい!!! てめー!!! ざけんじゃねえぞ!!!!!」  吠える竜脳寺を見て嶺歌は確信する。先程よりも確実にダメージを与えられている。  新聞の記事に校内放送、そして意味不明な音楽。これらが合わさり竜脳寺の精神を抉っているのは間違いなかった。  これらの演出は、竜脳寺にしか分からない幻聴だった。  新聞部の記事作成だけは本物であり、嶺歌が時間をかけて部長へお願いした正真正銘本物の品であるが、それ以外の校内放送やこの不気味な歌詞の音楽は全て嶺歌が魔法で作ったイカサマだ。  竜脳寺は嶺歌によって幻聴を聞かされているのだ。  ゆえに竜脳寺以外にこの放送が聞こえる事はなく、頭の可笑しい音楽も聴こえるものではない。  竜脳寺はそれに気付かず、学園内に自身の羞恥があらゆる方法で露見されていると思い込んでいる。  そう思い込ませるのが嶺歌の目論みだった。
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