第十六話『露見』

7/10
前へ
/520ページ
次へ
「新聞部、放送部、それとこの楽曲。あんたはどれから止めにいくつもりなの?」  嶺歌(れか)は怒りを隠せずにいる竜脳寺(りゅうのうじ)に語りかける。  対面している奴の表情は野獣のように険しく、今にも嶺歌に掴みかかってきそうな雰囲気を持っている。 「てめえが俺様の人権を奪いやがって……」  そして予想通りに竜脳寺はこちらに歩を進めるとズンズンと近付き、嶺歌の胸ぐらを掴んできた。  だがこちらがそれで怯む事はない。奴の態度は予想通りであり、嶺歌としても何も支障のない展開だ。  そしてそろそろこいつに思い知らしめてやらねばならない。竜脳寺が今どんな状況下に置かれているのかを――。  嶺歌は片手で竜脳寺に見えない透明ステッキを振るい、奴に事態を把握させる行動に出た。  嶺歌がステッキを振るうと途端に竜脳寺の怒りに満ちた表情は――――一瞬で青ざめた。 「…………は?」 「竜脳寺くん、あの人本当に竜脳寺くん?」 「今まで猫かぶってたってことかよ? やべー」 「竜脳寺さんがあんな横暴な殿方だったなんて……」 「婚約者を裏切ったんですって? とんでもないわね」 「竜脳寺あいつ、いい奴だと本気で尊敬してたのに…」  途端に騒めき出す中庭グラウンド。そう、このグラウンドには実は大勢の生徒がいたのだ。  竜脳寺は突然現れた多くの生徒の存在にひどく動揺しているが、彼らは突然現れたのではなく、嶺歌の魔法によって隠されていた。  かけていた魔法は魔法だ。  竜脳寺を中庭グラウンドに呼び出す前に嶺歌は多くの生徒たちをあらかじめ中庭グラウンドに誘導していた。  本日の六時に竜脳時の新聞の詳細を中庭グラウンドにて詳しく説明すると新聞記事に予め書き込んでもらっていたのだ。  嶺歌の予想通り、学園の中でも有名な竜脳寺の特集記事に釣られる生徒は多くいた。  そしてそれを餌に集められた生徒たちに、竜脳時の本性を間近で見てもらう。最高の演出だ。
/520ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加