28人が本棚に入れています
本棚に追加
「謝りなよ」
「謝罪するべき」
「謝罪してないってほんと? 謝れ」
「土下座でしょ」
「反省して償え」
「ちが……ちがう……僕は…俺は…………」
いくら竜脳寺が強靭な精神力を持っていたとしても、一斉に多くの崇拝者達を敵に回したのだ。
百人以上はいるこの中庭グラウンドの生徒達から敵意を向けられれば、物怖じしない訳がなかった。ましてや、これまで崇拝の声だけを集めていた男なのだ。
そんな人間が、一瞬にしてその場にいる全員から軽蔑の眼差しを向けられてしまうというのは、辛くない訳がないだろう。
跪く竜脳寺に対し周囲の目線は氷のように冷たく冷徹な言葉が放たれていく。
竜脳寺を蔑む者、謝罪しろとせがむ者、騙されたと責める者。そんな彼らの精神的攻撃を、嶺歌は静かに見ていた。
(もう、いいか)
竜脳寺の顔は真っ青だ。もうどこにも自分は悪くないと抵抗の声を上げる気力を持っているようには見えない。
嶺歌はそのまま竜脳寺のすぐ近くまで歩いていくと言葉をかける。
「竜脳寺外理、あれなに謝罪する?」
嶺歌の声が奴に響いたのか、竜脳寺は死んだ目をしたまま小さく言葉を発する。
「はい……謝罪………します……」
もうこれで終わりだ。
第十六話『露見』終
next→第十七話
最初のコメントを投稿しよう!