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第十七話『貫禄のある』
外野が五月蝿い中、嶺歌は先程とは別人のように絶望的な表情をして地面に座り込んだ竜脳寺の姿を目に映す。
そして嶺歌はそのまま自身のスマホを手に取ると形南へ連絡をした。復讐が終わったから、指定の場所から謝罪を見ていてほしいと、そのような文言を送っていた。
「あれなはここにはいないけど、あたしが動画を撮っておくからここで謝罪して。ちょっとそこ近付きすぎなので下がってもらえます?」
形南がここにいる事を悟られてはならない。実は形南はこの学園内にいるのだが、数多の人間にそれを知られてしまうと高円寺院家の名に傷がつく問題が発生する。
だからこの場に彼女はいない事を強調する必要があった。
しかし一つ問題が生じていた。
竜脳寺を蔑んだ目で囲う野次馬達はここぞとばかりに竜脳寺の側まで近寄り、悪態をつき始めている。これは良くない傾向だ。
リスクは分かっていたが、謝罪の姿勢を見せ始めた竜脳寺をこれ以上攻撃する事は嶺歌の望むところではない。
悪人の竜脳寺は反省の色を見せたのだ。
それが自分の状況の悪さからくる不純な謝罪だとしても、これまで全く形南に悪びれた様子を見せなかった竜脳寺が謝罪をすると確かに口にしたのだ。
どんな理由であれ謝罪をすると言う人間をこれ以上責める事は、復讐ではなくただのいじめだ。
この先彼を責めていいのは、彼に直接気合を加えられた形南だけである。
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