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「ちょっと、下がってって言ってんでしょ! 竜脳寺が謝罪するから、早く退いて」
嶺歌の声を無視し竜脳寺に暴言の類をぶつけていく数多の生徒達に嶺歌は声を張り上げた。
彼らを焚き付けたのは間違いなく嶺歌であるが、これ以上の行いは止めなければならない。嶺歌は正義を諦めたくはない。
だがそれでも嶺歌の声に耳を傾ける者は半数くらいなもので、残りの生徒達は竜脳寺へ言葉の刃を向け続ける。
嶺歌は彼等に止めるよう告げるものの外野達の熱は収まるどころか高まりを見せていた。
(ああもう……しょうがないけどこれで)
流石に多人数相手に嶺歌一人が止めに入ったところで効果は薄い。嶺歌はため息を吐きながら透明ステッキを手に取り魔法をかけ――――――
(あれ?)
途端に強度な眩暈に襲われる。これは間違いなく魔法の使い過ぎによる魔力切れだ。しかしこんな事は初めてだった。
(うわ、まじか……謝罪まだしてもらってないのに。ていうかその前に……)
竜脳寺を取り囲み、彼に非人道的な言葉を発する数多の生徒達をどうにかしなければ。このままでは竜脳寺は完全に壊れる。復讐はしたかったが彼に廃人になってほしい訳ではなかった。
人間は誰でも間違える。それでも、それを理解し、反省してまた前に進めるのだ。竜脳寺にはその可能性があった。
形南の友人として彼に制裁を下した今は、ただ魔法少女として彼に今後の生活を改めて暮らしてもらいたいと、そう思っていたのに。
(魔力ここまで使うとは考えてなかったな……やば、意識が………)
嶺歌は強烈な眩暈に耐えきれずその場で身体が崩れるのを意識の奥で感じていた。
そして同時に自分にかけていた魔法と魔法少女の変身が一遍に解けるのを実感する。
そのまま倒れる――そう思っていた嶺歌はしかし耳を疑う言葉を耳にした。
「嶺歌。ありがとうですの。後は私にお任せくださいな」
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