第十七話『貫禄のある』

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 竜脳寺(りゅうのうじ)を反省させるために使用した魔法はいくつかある。  まず竜脳寺が嶺歌(れか)に危害を加えようとした際に対処できるよう予め魔法少女の姿になっている必要があった。しかし魔法少女の姿を不特定多数の人間に見せるわけにはいかない。  そのため魔法少女の姿を人間の姿に見えるよう魔法をかけていた。それが一つ目の魔法だ。しかしこの魔法は魔力を多分に消耗するため、普段使おうとは思えない魔法だった。  そして次に竜脳寺を反省させるために考えた校内放送と奇妙な歌詞を使った音楽の幻聴だ。  それから極め付きは竜脳寺自身にかけていた中庭グラウンドの人物を嶺歌以外は全て見えなくする魔法である。  そして最後にモニターに映した竜脳寺の過去の鮮明な映像。あれらは過去を探る魔法とそれを肉眼で見えるよう映し出す高度な魔法であり、多くの集中力と魔力を消費する。  それに前提として嶺歌は復讐を始める直前まで透明になる魔法も使用していたのだ。  それらを全て使ったのだから、このように体に力が入らなくとも不思議な話ではなかった。しかし嶺歌は形南(あれな)の今の姿を見て、後悔は一切していなかった。 (あれなが復讐できてよかった)  彼女の今後は心配でもあるが、それでもこうして彼女自身の手で復讐が成し遂げられた事は友人として喜ぶところだろう。  そう思った瞬間、嶺歌は瞼が急激に下がるのを実感する。そうして形南の行方を見届けられた事に安心したせいかそのまま自身に迫る睡魔を受け入れていた。 「嶺歌さん」  嶺歌の意識が完全に途切れた時、兜悟朗(とうごろう)は柔らかな声で言葉を溢していた。 「貴女は本当に正義を捨てないお方なのですね」  そう告げて、兜悟朗の膝で眠りにつく嶺歌を優しく見つめる。 「貴女様を心から敬服いたします」  彼はそう確かに口にした。 第十七話『貫禄のある』終                  next→第十八話
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