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するともう一人の声に気が付く。形南の後ろに必ずいつも控えている執事の兜悟朗だ。嶺歌は彼の方へ顔を向けると目が合い、すぐに会釈をした。
「兜悟朗さん、昨日は家まで運んでくれてありがとうございました。それに、色々……」
昨日兜悟朗にしてもらった事は実は運んでもらった事だけではない。
嶺歌が魔力切れで倒れかけた時、支えてくれた上に彼の膝に頭を乗せ、休ませてもらっていたのだ。
あの時は意識が朦朧としておりそこに気を掛けられる余裕がなかったのだが、回復した今思い返すととてつもない事をしてもらっていたのだと自覚し、叫び出したい程の羞恥心が襲ってくる。
「あたしが倒れた時に、ご面倒おかけしてすみません!」
嶺歌は顔が熱くなるのを感じながらも彼に頭を下げる。高校生にもなって、男性の膝の上で休んでしまうなど何たる事だろうか。
しかしそんな嶺歌とは対照的にくすくすと笑う形南の声と、柔らかい言葉を返してくる兜悟朗の声が嶺歌に向けられる。
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