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「ふふっ嶺歌ったら。兜悟朗がそのような事で気を悪くする訳がありませんの」
「その通りで御座います。嶺歌さんが謝罪される事など何一つ御座いません。貴女様は昨日、体力を消耗する程に形南お嬢様の復讐に向き合って下さったのです。どうか、謝罪は私に」
そう告げると兜悟朗は深々と綺麗な角度で頭を下げてくる。嶺歌は予想外の展開に目を見開いた。なぜ彼が謝っているのだ?
「ええ!? いや謝られる理由が分からないっていうか……てか、あたしが自分で魔力の消費量を見誤っただけなんで」
嶺歌が倒れたのは完全に自業自得だ。自分の能力の限界を管理できていなかったのだから自己責任としか言いようがない。
「いやもう頭上げてください! ほんと大丈夫なんで! 兜悟朗さんにはあたしの方が謝りたかったくらいですから!!」
嶺歌が再度そう言葉を告げると兜悟朗はようやく顔を上げてくれた。そして彼は柔らかく微笑み、こちらに向けて言葉を放つ。
「お優しいお心遣い感謝申し上げます。嶺歌さん、本日は形南お嬢様と共に私めからもどうかお礼をさせて下さい」
そう言って嶺歌に一礼した。まだここはマンションのエントランスだと言うのに、何故か豪華な邸宅に訪れたような感覚に襲われる。
嶺歌は多少のむず痒さを覚えながらもそれが自身の照れ隠しだということをよく理解していた。二人にこのように感謝される事が、とんでもなく嬉しいのだ。
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