第十八話『翌日』

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 野薔薇内(のばらうち)蘭乃(らんの)。彼女は竜脳寺(りゅうのうじ)形南(あれな)という婚約者がいると分かっていながらも彼に何度も色仕掛けで誘惑を繰り返し、挙げ句の果てに他人の婚約者を奪い取った性悪な女だ。  これは嶺歌(れか)が以前魔法を使用して彼女の過去の記憶を確認したため間違いようのない事実だ。彼女への報復も、もちろん魔法少女として問題なく行える。  肝心な復讐方法だが、実は昨日の出来事でいい収穫があった。今回はそれを使って野薔薇内を反省させようという算段である。 「ですが嶺歌、もうお一人で事を成すという意見には同意出来かねますわ」 「ん?」 「兜悟朗(とうごろう)」 「はい、お嬢様」  形南が彼の名を呼ぶと途端にこちらの付近まで兜悟朗が歩いてくる。  相変わらず俊敏なその動きに心の中で敬意を表しながらも嶺歌は兜悟朗が何をするつもりなのか彼の行動を目で追っていた。 「当日はどうか(わたくし)と共に参りましょう」 「……はいっ!?」 「彼女の動向は(わたくし)も追っております。情報の交換を共に行い、当日を迎えたく思います」 「兜悟朗も嶺歌も優秀ですの。けれど二人で協力し合えば更に優秀になりますでしょう? ですから、兜悟朗を使ってくださいな。今回は影からなどではなく、正面から嶺歌と共に報復を行いたいのですのよ」 「なるほど……」  形南の意見は的を得ている。嶺歌にしか掴めない情報があるようにきっと優秀な兜悟朗にしか掴めない貴重な情報もあるだろう。  このように前のめりに協力を申し出てくれるという事は本当に、高円寺院家の誇りの問題よりも嶺歌の事を優先してくれているという事だ。  そう改めて感じた嶺歌は、二人の申し出をありがたく受け入れることに決めた。  決行日は来週の金曜日だ。それまでに兜悟朗と情報の交換を行い、最善の準備をしておく。話はそれでまとまっていた。 第十八話『翌日』終                  next→第十九話
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