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そうして長い廊下を歩いた末に到着したのはとある扉の前だった。兜悟朗はそこでようやく嶺歌の手を解放すると扉を背にこちらに振り返る。
「私からの御礼はこちらとなります」
そう言って高級そうな扉の取手に手をかけた兜悟朗がドアを開けた瞬間、思わず眩しいと思ってしまうほどの豪華で煌びやかな数々のドレスが嶺歌の目に映り込んできた。
「わあ……」
(すっっっごく綺麗)
一点一点のドレスは多種多様なデザインであり、それでいてとても華やかだ。嶺歌は可愛らしくも女の子らしいドレスが大好きである。思わず辺りを見回し、嶺歌は部屋中に飾られた美しいドレス達に見惚れてしまう。
しかし兜悟朗のにこやかな笑みで我に返った。嶺歌は彼に視線を戻し、説明を求めた。流石にこれがプレゼントと言われてもあまりにも抽象的すぎて分からない。
具体的な詳細を待っていると兜悟朗は尚も微笑みながらこちらの質問に返答してきた。
「はい、ご説明させていただきます。こちらの中から嶺歌さんのお好きなドレスを一着お選び下さい。その後、メイドをお呼びしますので嶺歌さんには少々お支度をして頂く事となります」
「? 支度って何のですか?」
嶺歌がそう尋ねると兜悟朗は一枚の紙をこちらに手渡してくる。それは高級紙で金箔が散りばめられた豪華な招待状だった。
「こちらのパーティーにご招待させて頂きます。参加者は形南お嬢様と嶺歌さんで御座いますゆえ、気を張られる必要は御座いません」
「……ええっ!!?」
パーティー!? と思わず素っ頓狂な声をあげそうになる。しかし他でもない彼が冗談を言うとは到底思えない。兜悟朗の言葉は嘘偽りのないものなのだろう。
けれど突然パーティーと言われても人生で一度も経験のないこのような場に自分が本当に出向くのかという衝撃が強かった。だがしかし――――
(めっちゃ楽しみ!!!!!)
そう、心の中で驚きと同時に同じくらいワクワクしている自分がいた。嶺歌はお城の中で美しいドレスを見に纏い華麗にパーティーに参加する女性像に昔から憧れていたのだ。
子どもながらにこんな未来は夢の世界の話で一生あり得ないものだと理解し、高望みはせず生きてきた。
しかし夢の世界では終わらないのだと今この状況がそう告げてくれている。
あまりの嬉しさに冷静さを忘れ、やや興奮気味に目を輝かせて部屋中を見つめる嶺歌に兜悟朗は再び言葉を掛けてきた。
「今回の御礼は嶺歌さんをパーティーに招待させていただく、というものに成ります。お気に召して頂けたでしょうか」
そう言って胸下に手を当てながら柔らかく微笑む彼に嶺歌は大きく頷いてはい! と答えた。
「こういうのすっごく憧れてたんです! ありがとうございます!」
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