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そう尋ねると兜悟朗はこんな言葉を口にする。
「問題御座いません。今回の主役は嶺歌さんでございます。お嬢様からは私に貴女様をエスコートするよう仰せつかっております故、本日は私兜悟朗が嶺歌さんをおもてなしさせて戴きます」
そう告げて深く綺麗なお辞儀をした。
今回は嶺歌に対する感謝の場だと形南は何度も言っており、現に形南からの感謝は今日の数時間だけでたくさん受け取っている。
しかし彼女の一番信頼している執事まで嶺歌にエスコートさせるというこの状況は、形南がどれだけの思いを嶺歌に向けてくれているのかが伝わり、それが素直に嬉しく思える。
「ですが嶺歌さん」
そんなことを考えていると突然、兜悟朗が言葉を付け足してきた。
「パーティーの際にもし貴女様がお気に召される執事がおりましたら、何なりとお申し付け下さい。直ぐにその者と交代いたします」
「あ、はい……」
突然な話に嶺歌は思わず頷いてしまう。
すると兜悟朗は嶺歌の返答を聞いて直ぐに笑みを溢すと「何かありましたらお申し付け下さい」と言葉を残し、扉の近くで待機する姿勢を見せ始める。嶺歌がドレスをゆっくり選べるようにと配慮してくれている様子だった。
その様子を見た嶺歌は再びこちらに気を配り続ける形南と兜悟朗には感謝してもしきれないとそう改めて感じ、そして胸が温かくなるのを実感していた。
そうして形南の事を再び考える。
これから二人で綺麗なドレスを身に纏い、楽しい話をしてパーティーを楽しめるだなんて、なんて贅沢で素敵なプレゼントなのだろう。お礼だと彼女らは口にするが、こちらが感謝してしまいたい程だ。
嶺歌はそこまで考えると、早く形南に会うため思考を切り替えドレス選びに頭を集中させた。
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