第十九話『招待されて』

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「楽しいですわね」 「うん本当! こんな豪華な一日なかなかないって」  パーティーを一通り楽しんだ二人は一旦休憩しようとふかふかのソファに座り、雑談をしていた。  形南(あれな)のエスコートをしている執事も、嶺歌(れか)をエスコートしてくれている兜悟朗(とうごろう)も今この場には居らず、完全に形南と二人きりである。  嶺歌は自分がいつもより着飾っているせいかまるで本当にお金持ちのご令嬢になった気分だった。  今身につけている嶺歌のドレスも、嶺歌がいるこの空間も、そして常時嶺歌をエスコートしてくれる兜悟朗も全てが非日常的だ。 「本当にありがとう! 今日の事は一生忘れないだろうなー」  嶺歌が本心からそう呟くと形南はあらと声を上げながらくすくすと笑みをこぼす。 「今回のお礼がお気に召していただけて良かったですの」  形南は嶺歌に目線を向けながらそのような言葉を口にした。  嶺歌は「あれなが喜ばせようとしてくれたんだから何でも嬉しいよ」と言葉を返し笑ってみせると彼女は嬉しそうに笑いながらお礼の言葉を述べてくる。 「けれど、(わたくし)の最初の案を採用していたら嶺歌はきっと怒られていたと思うのですの」 「ええ? そんなことあるかな」  形南の言葉に同意ができず嶺歌は顔を顰めた。形南にお礼をされて自分が怒るような事など、起こり得るだろうか。  しかし数秒後に形南がその詳細を口に出し、嶺歌の思考は一変する。 「はいですの。最初の候補は高円寺院家の鍵のプレゼントでしたわ。次の候補は高円寺院家の紋章が印字された特殊なクレジットカードのプレゼントでしたの。どちらも結局お蔵入り案となりましたけれど」 「ああ、それは却下かな……」
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