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途端に嶺歌は理解した。身分の違いのせいか否かプレゼントに関する価値観が違いすぎる。大体、自宅の家の鍵を友人に渡すという発想自体、意味不明だ。
形南は天然という訳ではないが、価値観が時々理解できないところがある。
それにクレジットカードのプレゼントもどうしたらそのような発想になるのか見当がつかない。嶺歌が欲を出して高額な買い物ばかりをしたらどうするのだろう。
(まあ高円寺院家の人にとってははした金かもしれないけどそんな人の金で豪遊する友達、あたしは絶対嫌だな)
嶺歌はそう考えていると形南は「そうですのよね」と声を返してきた。
「やはり今回こちらのパーティーご招待案を選んでよかったですの」
そう言って嬉しそうに笑う形南を見て、嶺歌は気が付く。
(でもあれなはあたしを喜ばせたくて色々考えてくれたんだ)
たとえ理解のできない価値観であったとしても嶺歌という友人を思って彼女が試行錯誤してくれた事は事実だ。形南の心遣いは純粋にとても嬉しかった。結果が全てとは言うが、嶺歌は過程も大切にしたい。
「ありがとう。確かに鍵とかクレカとか実際に貰うのは抵抗あるけど、あれながあたしのために考えてくれた気持ちはめちゃくちゃ嬉しいよ」
「嶺歌……なんて心が広いのでしょう」
そう口に出すと形南は再び柔らかく笑い「実はですね」と言葉を続ける。
「今回のパーティー案は兜悟朗の意見ですの」
「兜悟朗さんの?」
嶺歌は彼の名が出て驚く。確かに彼ならこのような発想をしても違和感などないが、それにしても嶺歌の事を熟知しすぎではないだろうか。
「ええ。以前嶺歌が仰っていたでしょう? 煌びやかなドレスを着るのが夢だと」
そう言われ、嶺歌は以前の記憶を思い出す。前に形南とカフェに行った時、何気ない会話でそのような話をしたのだ。
大人になって自分の力で行くという前提の話であったのだが、まさかそれを覚えてくれていたのかと胸が熱くなる。
「兜悟朗に先程のプレゼント候補を考え直した方がいいと言われたので、頭を悩ませていましたの。そうしたら彼がパーティーへのご招待はどうかと提案してくれたのよ。そこで私は嶺歌が前に仰っていた言葉を思い出したのですの」
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