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嶺歌は魔法少女に変身し、再び姿を人間に見える状態にしたところで彼女の住む屋敷に侵入していた。
セキュリティの高い豪邸でも、嶺歌が入る際は透明になればいとも容易く彼女に接触ができる。
ゆえに今、嶺歌がこの屋敷に侵入した事を知る屋敷内の者は目の前の野薔薇内だけである。
前回の二の舞を踏まぬように今回は最短で終わらせるつもりで行動をしていた。
そうして野薔薇内の自室に侵入した嶺歌は会って早々彼女にそんな言葉を発した。
通常であれば何故侵入しているのかと驚くであろうこの状況も、野薔薇内は相当精神が参ってるようで、竜脳寺という名前だけに反応を示していた。
「がっ、外理様からっ!!? ど、どんな!? 早く聞かせなさいよ!!!」
一度しか会った事のない嶺歌に掴みかかるように近付いてくる彼女の姿は本当に滑稽であった。
人の婚約者を奪い取ったくせに自分のことは棚に上げ、いざ自分が捨てられればただただ錯乱する。なんて我儘で自己中で、愚かな人間なのだろう。
「待ちなって。今再生するから静かにして」
嶺歌は彼女にスマホを見せると、お望み通り竜脳寺の音声メッセージを再生する。
正確に言うと野薔薇内に向けたメッセージではないのだが、そんな事を知る由もない野薔薇内は興奮した様子で嶺歌のスマホに顔を近付けさせた。
『じゃあ野薔薇内蘭乃はあんたに釣り合ってると思って乗り換えたわけ?』
『あいつは利用価値が高いから使ってやってるだけだ。俺様に相応しいのは、あんな女どもじゃねえ』
「…………え?」
竜脳寺に復讐をした日、入手していた音声データだ。
これは魔法ではなく予めスマホで録音をしており、彼が何か有益な情報を吐いた時のために仕掛けておいた。それを切り取ったものだ。
「これ…………外理様が…いったの……?」
野薔薇内は絶望した表情のまま床を見つめる。
「間違いなく外理様のこえ…だけど…………うそでしょ……」
「本人だよ。あたしが質問の主。現実見な」
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