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嶺歌は床にへたり込んだ野薔薇内を見下ろしながら、スマホで合図を送る。他でもない兜悟朗にだ。そうしてもう一度野薔薇内に言葉を告げた。
「竜脳寺は高円寺院形南に謝罪した。そしてあんたを捨てた。あんたもこれは知ってるでしょ?」
そう言って彼女にスマホで映した竜脳寺の土下座写真を見せてやる。
これは嶺歌が撮影したものではないが、多くの生徒があの中庭グラウンドにいたため、たくさんの写真がネット上に流出していたのだ。
今では反省した竜脳寺の写真の流出を止めるよう魔法の力で対策をしているが、嶺歌は今回の報復の為にその一部を保存しておいてあった。
野薔薇内はその写真を目にして歪んだ表情を見せる。
「やめて!!! 知らない知らない!!!」
「ていうか、あの女のせいじゃんっ!!! あいつが外理様を痛め付けたから!!!!!」
一人で頭を抱え込み発狂する野薔薇内は急に顔を上げ、嶺歌を睨みつけた。
「あんたなんなのっっ!!? 外理様を返せっ!!!!!」
「わたしのものなのっ!! あんな可愛くもない高円寺院なんかじゃなくて、わたしがふさわしいのっっ!!! なんで盗るのよっ!!? わたしがぜったい……彼に愛されてるのに!!!!!!!!」
どうやら野薔薇内はおめでたいその頭で大きな勘違いをしているようだ。しかしそれに嶺歌は口を挟まない。ここで自分の役目は終わりだからだ。
「聞き捨てなりませんので、訂正をさせて頂きたいですの」
「!!!? あんた……!!!」
途端に形南が部屋に入ってくる。彼女は後ろに兜悟朗を連れながら堂々と野薔薇内の目の前に立ってみせた。
後光が差しそうなその雰囲気は、野薔薇内も無意識に感じ取っているのか一瞬唾を飲み込む音が聞こえていた。
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