第二十話『第二の復讐』

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野薔薇内(のばらうち)蘭乃(らんの)様。(わたくし)アレとはもう一切の関わりがありませんの」 「アレって何よ……!?」 「竜脳寺(りゅうのうじ)外理(がいすけ)ですの。言わせないで頂戴な」  形南(あれな)は野薔薇内を見下ろしながら言葉を放つ。  彼女の声色は透き通るように美しいものであるがゆえに、冷たい声がまた彼女の高貴さを強調させている。 「ハッそんな嘘は信じな……!!!?」  途端に形南は一枚の写真を野薔薇内の目の前に突き出す。その写真は数年前に撮られたものと思われるまだ幼い形南と竜脳寺のツーショットだった。  突然差し出されたその写真に野薔薇内は目を見張った。 「いい事? (わたくし)はあのようなモノ、とっくに必要ないんですの。私には今、他に思いを馳せている殿方がいますのよ」  そう告げると形南はその写真を野薔薇内の前でゆっくりと引き裂きビリビリと破き始める。  小刻みに切り離された紙の破片は、野薔薇内の頭からはらはらと降り注がれていく。 「ああ、それから」  形南は思い出したように野薔薇内の方をもう一度見る。 「盗ったのは(わたくし)ではなく貴女。現実から目を逸らされるのは迷惑でなりませんの」  形南の言葉に野薔薇内は何も言い返す事ができない。歯を食いしばり、悔しそうに顔を歪め、床だけを見つめている。 「行きましょう」  形南は嶺歌(れか)兜悟朗(とうごろう)に声を掛けるとそのまま足を動かす。もう野薔薇内に復讐を果たせたのだと、形南はそう告げているのだ。  本来であれば土下座をさせたいところであったが、形南がこれでいいと言うのならそれでいい。  嶺歌はもう一度だけ野薔薇内に一瞥をくれてやるとそのまま足を進めた。 「……待ちなさいよ」  すると扉の方まで歩いたところで野薔薇内の声が部屋中に響く。  彼女はまだ何か言いたげであり、嶺歌たちが振り向くと地べたに未だ足を預けたまま野薔薇内は顔を上げてこう放った。 「高円寺院家が浮気の腹いせに復讐だなんて笑わせるじゃない!!! いいの!!? たかが浮気如きで、復讐をするような財閥なんだって後ろ指さされるわよっ!?!?!? 世間の目を気にするほど大きな財閥である高円寺院家サマの誇りとやらはどうでもいいのかしらっっ!!!?」 「あら」
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