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「あれなスッキリした?」
「…………ッ」
兜悟朗の運転するリムジンに乗っても形南は無言だった。
そのため嶺歌も黙っていたのだが、やはり今回の一件がどうだったのか聞いておきたい。
そう思って尋ねてみたものの、形南は気まずそうにこちらから目線を外して窓側の方に目をやってしまう。こんな反応は初めてだ。一体どうしたのだろうか。
「どうしたの? 何か腑に落ちないとか?」
嶺歌は形南に顔を向け、再度言葉を発する。すると形南は顔を覆いながらこんな言葉を口にした。
「お恥ずかしいところを見せてしまいましたの。あのようなお姿をこの短期間で二度も……嶺歌には温和な私だけをお見せしたかったですのに」
「え、そこ?」
彼女が顔を背けていた予想外の理由に嶺歌はつい本音が漏れた。今更そんなところを気にするのだろうか。いや、財閥のお嬢様であるのだから体裁を気にするのは当然の思考なのかもしれない。
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