第二十一話『疑惑と信頼』

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 話を聞くと、どうやら高円寺院家の名に傷が付かないようにと神経を尖らせていたのは形南だけのようであり、彼女の受けた仕打ちを知っていた両親や兄弟たちはずっと竜脳寺や野薔薇内に報いを与えたいとそう強く願っていたようだ。  形南がそれは申し訳ないと泣き出した姿を見て、家族全員、形南の意向を汲むべく復讐を諦めたのだと、嶺歌はあの後兜悟朗から聞いていた。  そのため高円寺院家の誇りの問題に関しては何も心配はいらないと、形南の父親が声を大きくして告げていたらしい。  その話を兜悟朗伝手に聞いた嶺歌は心底安堵し、そして形南が如何に家族に愛されているのかを同時に知って心が温かくなった。  高円寺院家は高貴なだけでなく中身全てまでもが素敵な家族だと、微笑ましい思いになる。 (今日も頑張るかー)  形南も二人への報復を終え、一年間の鬱憤が綺麗に消えたと喜んでいた。嶺歌も友人の辛い過去を乗り越える手伝いが出来、それが喜ばしかった。  嶺歌はいつものように伸びをして起き上がると魔法少女の姿へと変身し、日課の魔法少女活動を行いに外へ出る。 「今日も頑張ったっと」  魔法少女活動を終え、寝癖のままの人間の姿に戻ると嶺歌は机に置いてあった未開封のペットボトルを開けながらそれを飲み干し、疲れを癒す。  そしていつものように準備をすると学校へ足を進めるのであった。
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