第二十一話『疑惑と信頼』

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和泉(いずみ)好きだ! 俺と付き合ってくれ!!」 「先輩すみません。気持ちに応えられません」  昼休みになると裏庭で一学年年上の先輩に告白をされた。しかし全く気持ちが揺れ動かない嶺歌(れか)は深く頭を下げて断りの声を口にする。 「そうか……残念だ」  先輩はそう口にすると悲しそうな表情でその場を去っていく。罪悪感はあれど、時間が解決するのを待つしかない。嶺歌にできるのは彼の幸せを心の中で願うことくらいだ。 (さあ行くか)  先輩が完全に裏庭を出ていくのを確認すると嶺歌も教室へ戻ろうと足を動かす。だが曲がり角を曲がるとそこで『ガサッ』という音と共に見知った顔の人物が目の前に現れた。 「あ……ご、ごめん」  それは平尾だった。彼はいたたまれなさそうな顔をしながら嶺歌の方をチラチラ見やるともう一度ごめんと謝罪してきた。わざとではないだろうに構わないのだが、何だかデジャヴである。 (前は兜悟朗(とうごろう)さんだったな)  そんな事を思いながら平尾に目を向け別に大丈夫だと言葉を返すと、彼は後頭部を掻きながら何かを口に出そうとしている。  嶺歌は急かすのも何だと思い、彼が声を発するのを待つ事にした。 「あ、あのさ……見るつもりはなくて、ごめん」 「え? いや今謝ってたしもういいよ?」  なんと平尾は三度目の謝罪をしてきた。謝るのが癖なのだろうか。  嶺歌は不思議に思いながらそう言葉を返すと彼は慌てた様子で「あ、ありがと」と口にした。 「何か話があるの?」  形南の事で何かあるのかもしれない。そう思った嶺歌は単刀直入に聞いてみた。  すると平尾は図星だったのか顔を上げると「う、うん」と声を返す。 「あ、あのさ……あれちゃんも告白とか、されるのかな」 「ん?」
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