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唐突な質問に嶺歌は聞き返す。いきなりどうしてそんな質問をするのだろうか。
「い、いや……その……和泉さんの告白現場見てたら、ふと……」
「ふーん?」
平尾は先程からもじもじと話しにくそうにしている。余程聞いたのが恥ずかしいのか顔も心なしか赤いような…………
(あれ?)
その瞬間、嶺歌は何かを察して咄嗟に言葉を放つ。
「ねえもしかして……」
「えっ! ちっ、ちがうよ!! それはないから!!!」
まだ嶺歌が口にしてもいないのに平尾は真っ赤な顔をして否定の言葉を口に出す。しかしその反応を見るとこれはそうなのではないかと勘繰ってしまう。
(こいつ、あれなの事好きなんじゃない?)
それなら願ったりだ。形南も大喜びである。いや、そんなものでは済まないくらい彼女にとっては嬉しくてきっとパーティーを何度も開くに違いない。
だが平尾が否定する以上は、嶺歌から安易に触れられる話題ではない気もしていた。
「まだ何も言ってないじゃん」
「そっ、そだね。ごめん……」
嶺歌の一言に平尾は申し訳なさそうに言葉を返しながら、居所が悪そうに顔を俯かせた。
平尾は顔を赤く染めながらもしかし何だか不服そうな表情が見え隠れしている。照れ隠しではないのか?
そんな彼の反応を目の前で見ていると平尾の視線は嶺歌を遠慮がちに見据え、だがそこでおかしな違和感に気が付いた。
(何か敵意持ってない?)
そう、平尾からは小動物のような弱々しい言葉や態度を見せられてはいるものの、隠しきれていない僅かな敵意が嶺歌に向けられている。
これは長年魔法少女活動をしてきた嶺歌が、気のせいなどではないのだと本能で理解していた。ゆえに絶対的に勘違いではない。
だがそこで考える。この男に恨みを買うようなことは断じてしていない。これまでの関わりから嶺歌の印象は良くも悪くもないだろう。
そう考え、なぜ敵意を向けられているのかをその場で思考していると、嶺歌はとある考えに辿り着いていた。
(待てよ? こいつ……あれなとは金銭目的で仲良くしてるんじゃ)
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