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第二十二話『公認尾行』
暑い気温がはじまりかけていたその日、形南から興奮した様子で電話がかかってきた。珍しく休日に嶺歌が自宅でのんびりとしている時だった。
『嶺歌!!!!!!!』
「あれな? どうしたの? 何かやけにテンション高いね」
自分の名前しか呼ばない形南にそんな言葉を掛けると形南は尚も興奮した様子で口を開く。
『どうしましょう!!! 私もう天にも昇ってしまう思いですの!!』
「そんなに? 何があったの?」
あまりの興奮ぶりに嶺歌は不思議な思いを抱きながらも彼女の言葉を待つ。一体何があったのだろうか。
すると形南は嬉しそうな口調でスマホ越しにこんな言葉を発してきた。
『今度の土曜日、平尾様とデートする事になったんですの!!!!!!!!!!!』
「えっ!!?」
唐突な単語に嶺歌は驚く。これまでの形南は平尾と連絡を取り合うだけで、まだ私生活では一度も二人きりで会ってはいないという。
二人で出掛けるのはもう少し先の話になるだろうと思っていたため嶺歌が衝撃を受けるのも無理はなかった。
「マジか! やったねあれな!!」
嶺歌は素直に友人の初デートを祝福した。形南がついに想い人と近づくチャンスを物にしたのだ。喜ばない選択肢はない。
形南の様子は普段以上に昂っているのが電話越しからでも大いに伝わってきていた。
形南は突然のビッグイベントに頭がいっぱいなのかひたすら嬉しそうに『はああですの』と声を漏らしていた。
そんな彼女の嬉しそうな顔を頭の上に浮かべながら嶺歌は言葉を返す。
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