28人が本棚に入れています
本棚に追加
/520ページ
「当日は気合い入れなきゃね。デート終わったら教えてよ。色々話聞きたいから」
そう純粋に思った言葉を彼女に放つとしかし形南は少し声の調子を落としながら「嶺歌」とこちらの名前を呼んできた。
そうして次にとんでもない言葉を口に出してきたのだ。
『貴女にはお手間を取らせて申し訳ないのだけれど……平尾様と私のデートを、尾行してほしいのですの』
「えっ!?!?!?」
まさかのデート尾行をお願いをされた。形南はそれでいいのだろうか。そもそも尾行してもらう意図は何なのだろうか。
さまざまな疑問が嶺歌の頭を駆け巡り、嶺歌は率直に彼女へ理由を尋ねる。
せっかく二人きりのデートなのに、自分が行くのはあまりにも野暮だろう。
その場に現れないとはいえ二人きりの世界をストーカーのように見るなどとんでもない邪魔者である。
しかしこのあと形南は再び予想の斜め上の回答を口に出し、興奮気味にこんな言葉を繰り出してきたのだ。
『その理由なのですけれど…………』
『平尾様とのデートを客観的視点で見てほしいからですの!!!!!!!!』
「…………ああそうなんだ」
意味は不明だが嶺歌はナチュラルに言葉を返す。客観的に二人のデートを嶺歌が見ても形南に何の得があるのかはよく分からなかった。しかし形南の考えは理解できないところもあるため考えていても仕方がない。
嶺歌はそんな事を思いながら終始嬉しそうに声を出す形南に相槌を打ち、その日の電話を終えた。
最初のコメントを投稿しよう!