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「そうですね、補足をさせていただきますと十年ほど形南お嬢様にお仕えさせて頂いております」
兜悟朗は柔らかい笑みを保ったままそんな事を教えてくれた。
十年ということは嶺歌がまだ小学生の時からという事だ。形南はこれまで生きてきた人生の半分以上を兜悟朗と共に過ごしてきたのだとそんな事を考える。
「十年も仕える程あれなを大切に思ってるんですね。兜悟朗さんがあれなをどれだけ大事な人として仕えているのか、あたしでもよく分かります。十年も一緒にいたらもう家族のようなものですよね」
嶺歌が形南の顔を思い浮かべながら口元を綻ばせそう口にすると、兜悟朗も同じだったのか先程よりも僅かに口元の緩みが深くなった。
「仰る通りでございます。お嬢様への敬いの心はこの先も変わる事はありません。嶺歌さんが申されますように私にとってお嬢様は恐れ多くもご家族のようなお方で御座います」
その兜悟朗の言葉を聞いて嶺歌は無意識に嬉しく思う自分がいた。
兜悟朗が形南を大切に思っているという事実が、今目の前で彼の口から放たれ、友人の信用している人物からの美しい忠誠心に心が温かくなる。
形南と兜悟朗の関係性を改めて認識できたような気がしていた。
「あれなのどういうところに敬意を示されているのか聞いてもいいですか?」
せっかくの形南の話題なのでもう一つ質問をしてみる事にした。
兜悟朗からは形南に対する強い忠誠心と共に彼女に対する尊敬の念も感じられていた。形南を兜悟朗は一体どのような面で敬っているのだろう。これも素朴な疑問の一つだった。
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