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「お嬢様と平尾様はイルカショーを見られるそうですね」
レストランを後にし、形南と平尾の姿を見つけた嶺歌と兜悟朗は先程と同じように一定の距離を保ちながら尾行を再開した。
するとすぐに形南からレインが届き、これからイルカショーを見に行くのだと報告が入ったのだ。
「あたし達も観客席にいた方がバレにくいですよね」
嶺歌がそう告げると兜悟朗は「そうですね」と笑みをこぼし、そのままイルカショーの鑑賞に参加する事になった。
形南と平尾はチャレンジャーな事に一番前の濡れてしまうこと必須な席に座り始め、雨ガッパを身に付け始める。
形南が上手く着用できない所を平尾が手伝い何とか着ることが出来ていた。
形南はいつも以上に頬を赤らめ、とても嬉しそうに笑顔で平尾を見ている。平尾の顔は見えないが、きっと彼の事だから照れているだろう。
(めっちゃ順調だ。もしかしたらワンチャンあるんじゃ?)
二人の付き合いたてのカップルのような雰囲気を遠くから眺め、嶺歌は考える。もしかしたらこれは帰り際に告白を交わしてお付き合いに発展なんて事もあるかもしれない。
そんな事を考えていると次第に自身の口元が緩み始めるのを実感する。二人のカップルが誕生したら、めでたいどころではないだろう。
嶺歌はサイレント機能のカメラをスマホで起動し、シャッターを押した。形南と平尾の肩を並べて座る姿がとてもお似合いだったからだ。
形南に撮影を頼まれたのは兜悟朗であり、嶺歌には頼まれていなかったが、きっとこの写真を彼女が見たら喜んでくれるに違いない。
そう思っているとイルカショーの時間となり、煌びやかなショーが幕を開けた。
イルカショーはそっちのけで形南と平尾の二人を観察していた嶺歌と兜悟朗は、ショーが終わると迅速に席を立ち、形南達と鉢合わせしないようにその場を離脱した。
そうしてその後もいくつかのエリアに出向く形南と平尾を尾行していった。
嶺歌と兜悟朗は二人ともデートの追跡に集中し、その間に私語を話す事はなかった。
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